三重県松阪市と言えば、有名な松阪牛の生産地です。
その松阪市にある松阪市立天白小学校版画集 松坂牛物語では平成18年の6年生が『松阪牛の学習』を行い、
その様子を版画にして一冊の本にまとめました。
牛が生まれて育ち、そして肉となり私たちに食べられ、また新しい命となっていく様子を子供の目から描いています。
そもそもこの学習は『給食で松阪牛が食べたい』『有名でおいしそう』そんな子供達の声がきっかけでした。この子供達の給食でのリクエスト献立がきっかけで始まりました。子供たちはこの学習を通じて命の尊さを学び、さらに地域の産業や文化、歴史、人々の暮らしを知ることになりました。
農林放送事業団では天白小学校の生徒たちが作った版画本「松阪市物語」に感銘し、これを映像化できないか、というところから平成19年度に関係者と協力し、映像制作をすることになりました。

牛肉の食べ比べ平成19年度の6年生による『松阪牛の学習』が始まりました。
給食の時間に牛肉の食べ比べを行い、授業の中で感想を発表する子供たち。
松阪牛と輸入牛肉とでは、味も、香りも、そして価格も違いました。
『この肉になる松阪牛はどんな牛なんだろう?』
『どんな人が、どんな育て方をしているのだろう』


こうした子供たちの学習に地域の多くの人たちも協力しています。
ある日、森本さんが松阪牛を二頭連れて、天白小学校にやってきました。
肥育農家 森本さん森本さんは『松阪牛のふるさ』と松阪市飯南町(いいなんちょう)で、松阪牛を肥育しています。雌牛だけを一頭一頭、愛情込めて育てています。
(そう、松阪市は子供を産んでいない雌牛だけを育て肉用にするのです。)
『牛は、私の子供なんです』と言う森本さん。
子供達の多くは、初めて牛をこんなに間近で見ました。
直接さわると、牛の毛並みや暖かさがよくわかります。
牛を見て、ふれて、森本さんの話を聞いて子供達は、自分たちが食べた松阪肉は実は愛情をかけて育てられた家畜だったと言うことがわかったようです。

心臓の音と胃の音を聞く校外学習の日。
『松阪牛の学習』から離れて乳牛についての勉強の為に、ふれあい牧場での畜産体験に出かけました。
バター作りにも挑戦しました。
初めて、自分で作ったバターの味はどうでしょう。
聴診器体験。
獣医さんに教わりながらジャージー牛の『心臓の音と胃の音』を聞いてみました。
『ドックン・ドックン』『ググググッ』初めて聞く牛の心臓や胃の音。

乳搾りにも挑戦しましたが、なかなかうまく搾れないようです。

エサやり体験する子供たち肥育農家吉田牧場を訪ねる子供たち。
こちらは、大規模経営の松阪牛肥育農家、吉田牧場。
ここでは、肥育牛約160頭を育て、おいしい牛肉の生産が出来るような経営を行っています。
エサやり体験をする子供達。
いつまでもエサをやり、牛から離れようとしない子供たち。
この牛がやがて肉になるのかと、考えさせられたようです

食肉公社についての事前授業。
見学を行う前に、食肉公社について学習します。
肥育農家が育てた牛を肉にする施設、食肉公社。愛情を持って育てられた牛の
命をいただいて、その命を新しく牛肉に、生まれ変わらせます。

仕事内容の説明を受ける事前に学習して来た子供達でも、初めて見る光景には、やはり複雑な思いがあるようです。

とちく銃の説明。
牛をとちくする本物のとちく銃の説明や、食肉公社での仕事内容の説明を受け、子供達はその流れをしっかりと理解した様子です。
牛の解体作業を真剣に見つめている子供達は、働く人たちの技術、素早さ、正確さに圧倒されていました。

『私が今、生きているということは他の命をもらっているということ。
だから命をもらっている私たちは幸せです。
これからは、生き物の命をムダにしないように残さず食べたいです』
平成18年度の子供たちはこんな感想を記しています。

見学のあと食肉公社に併設された牛たちをまつった、獣魂碑にお参りをしました。
『私たちのために肉になってくれてありがとう』の気持ちを込めて、手を合わせていました。ハンバーグづくり

そもそも松阪市を食べたい、と始まった子供達によるリクエスト給食。
やっとそれが実現してみんなで給食のとき松阪市のすき焼きをいただきました。

そして、自分たちでも松阪市を料理して食べようと、栄養教諭にも相談に乗ってもらいみんなで献立を考えました。
そして松阪牛の肉100%を使った『煮込みハンバーグ』作りを体験しました。

これまで学んできたことを発表する学習発表会に向けて準備をおこない、
『松阪牛の学習』の成果を保護者の前で発表します。

松阪牛の発表コーナー学習発表会当日。
学んできた事をしっかりと皆さんに伝えることが出来ているようです。


学習発表会終了私たち人間は、他の動物や植物の命をいただいて生きています。
それだけではありません。食材の向こうにはいろんな人の労働や、人とのつながり、そして自然環境が見えてきます。 
この取材を通じて私たちは、天白小学校の子供達がそうしたことを知り、豊かな心を育み、「命」について考える貴重な機会を得ることができたものと感じました。