2014年8月、丹波地方を襲った豪雨によって、兵庫県丹波市の養鶏企業芦田ポートリーは4000羽いた平飼いの鶏が、浸水によって瀕死の状態になったといいます。関さんは以前、有機農産物のバイヤーをやっていましたが、芦田ポートリー入社1か月目でのこの試練だったと振り返ります。10日たって、地元家保の助けも借りて移動が完了したのですが、今回のこの経験が関さんをより一層強くしてくれたようです。
 関さんにとって芦田ポートリーはバイヤー時代の取引先のひとつで、関さんは消費者と小規模な卵生産者をつなぐ役割を担っていたそうです。芦田ポートリーは、地域にあった小規模の養鶏農家が離農時の生産を引き継ぐ形で規模を拡大してきたのですが、2013年には経営を取り巻く変化が大きく不安定化する中で、6次化へ舵を切ったといいます。そこに降って湧いた水害で、経営規模も縮小せざるを得なかったそうです。そこで打った手は、平飼い卵のブランド化ということで、関さんはその中心として働いてきました。「幸世村の平飼い卵」と名を付け、価格も見直して取引先と交渉してきたそうです。2015年には平飼い鶏舎も再建され、卵加工品や鶏糞を使った産直の野菜とのセット販売も始まり、芦田ポートリーは息を吹き返します。
 関さんは、「もし、もっと農業や農家のことを私が理解出来たら、もっと多くのことを消費者に伝えられる」と考えており、流通から一転生産現場に足を踏み入れたわけで、「私がここにいる意味がある以上、やり続けます」という頼もしいスタッフです。やりがいのある仕事を見つけた人は強くなれるのではないでしょうか。

 詳しくは(独)日本政策金融公庫 農林水産事業本部の発行する「AFC Forum(フォーラム)」2018年6月号のコラム「食と農の邂逅」本文をご覧ください。