農畜産業振興機構の機関紙「野菜情報」6月号では「調査・報告」「わが国の小規模有機農業経営が抱える課題〜富士山麓における取組事例から〜」と題する
東京農業大学国際食料情報学部教授大浦裕二先生の報告をご紹介します。
新規就農を希望する人たちや農業後継者を含む若い人たちの意見を聞くと、ほとんどの人たちが「有機農業」と言います。農業の在り方は多様な成り立ちができることに良さがありますが、この調査報告は、富士山麓で有機農業に取り組んでいる中小規模の経営を事例に、課題や将来展望を明らかにします。
 静岡県の富士宮地域では10戸の有機栽培農家が学校給食向けの共同出荷を行っていたところから、加工食品会社、レストランも加わった富士山麓有機農業推進協議会を立上げ、現在会員は26戸、耕作面積は26.4ha、コメはもちろん、野菜、果物、ラッカセイなど多種多様な作目で、販路はレストラン、個人宅配、イベント出店などを中心に、共同事業として機械や冷蔵庫の共同利用をしています。特筆すべき事項として「有機農予備校」があり、将来有機農業をやろうという人たちを会員の農家が受け入れているといいます。
 「なごみ農園」の代表宮田雅和さんはIT関係の仕事をしていたそうですが、31歳の時農業法人に就職し、34歳の時に富士宮市で農地が借りられ、30aから始めたといいます。自分で作った野菜を積極的にレストラン等に売込み、3年目から黒字化し、現在2.2ha、200種を作付けているそうです。
 ドラゴンファームの瀧田純忠さんは、父親の農業を手伝ううちに、野菜のおいしさに気付き、地元の牧場で9年間働き父親の技術を勉強して自分のものとしてから2014年にドラゴンファームを立ち上げ、2haの農地は全て借地で、100種以上の野菜を3名でつくり、法人化を目指しているといいます。
 大浦裕二先生の調査結果の総括では、現状の有機農業では多品目少量生産とならざるを得ず、第三者認証を得るには手数や経済的負担も大きく、また、すでに直販でお互いの信頼関係が出来上がっており、必ずしも第三者認証の必要性をあまり感じていないこと、経営規模が小さいことから設備や機械への投資ができず、したがって、労力の確保や規模拡大ができず、有機農産物の宣伝や消費者へのPRの機会も少なく消費の拡大が思うように進まないことなどを指摘しています。

 詳しくは農畜産業振興機構の機関紙「野菜情報」6月号をご覧ください。