農畜産業振興機構の機関誌「畜産の情報」2017年5月号の「自然と地域と育む魅力ある放牧酪農づくり―鹿児島県姶良郡湧水町 農事組合法人上床酪農組合の取り組み―」を紹介します。
平成28年度の畜産統計では全国で放牧酪農に取り組んでいる戸数は4920戸ということですが、鹿児島県ではわずか2戸が取り組んでいるだけといいます。そのうちの1戸が、ここに紹介する上床酪農組合(代表竹中勝雄さん)です。
 竹中さんは、中学生のころスイスの放牧写真を見て放牧に酪農にあこがれ、北海道で研修を積んできました。故郷に昭和30年代から放置されていた開拓地を入手し、水や電気もない中、文字通り1歩から開拓していったといいます。水は4キロの水路を作り、48年に結婚、49年になって電話が、電気が来たのは50年だったといいます。現在の農事組合法人になったのは昭和52年。35haある上床牧場は霧島山系の一角の標高600〜700mのところ、原生林が残り、国立公園とも接して、原野の野焼きもおこなわれており、この自然が酪農教育ファームや環境省による生物多様性などの重要な里地・里山にも選定され、竹中さんたちの環境活動の原点にあるそうです。
飼養頭数は76頭(搾乳牛頭数は48頭)、1頭当たり乳量は7000〜8000sとなっており、牛にも無理をさせず、長命・連産の牛作りを目指しているといいます。冬場の一時期には乾草を食わせていますが、昼夜放牧のためストレスが少なく、これが低コスト生産に結びついているといいます。
 竹中さんは、酪農はきつい仕事というイメージを払拭し、自分や地元の人たちが楽しめる豊かな酪農を目指したい、まだ開拓できるところはたくさんあるはずといっています。

 詳しくは農畜産業振興機構の機関誌「畜産の情報」2017年5月号をご覧ください。