今回は『講談社ブルーバックス「チーズの科学」齋藤忠雄著』をご紹介いたします。
 ナチュラル・チーズが日本でもようやく消費者に認知されてきて、プロセス・チーズにかわって消費量はかなりの勢いで伸びてきているそうです。酪農家の方々の中には、6次産業化の目標としてアイスクリーム(ジェラート)とともに、いつかは手掛けたいもののひとつになっているのではないでしょうか。
 本書は、第1部「チーズと出会うために」、第2部「チーズつくりの科学」、第3部「チーズの熟成の科学」、第4部は「チーズと健康の科学」の4部、全体で10章の構成となっています。ナチュラル・チーズができるまで、美味しいチーズと出会うための基礎的な知識、最近注目されている機能性などなど、チーズに関するあれこれが延べられます。
そもそも、世界中には1000種を超えるチーズがあるといいます。分類するのは非常に難しいそうです。原料も牛乳だけではなくヤギやヒツジの乳を利用するもの、発酵と熟成方法も、中央アジアには強烈な太陽光のもとで乾燥させるチーズもあるというわけで、ソフト系、ハード系などしいて分類すれば世界で一番多種類を生産するフランスで6種類、日本では7種類に分類するのが普通のようです。世界で一番多く作られているのはチェダー・チーズというように、楽しく学ぶことができます。また、チーズの品質を決めるレンネット(と代替品)の供給事情、乳酸菌と発酵・熟成の機序など興味がつきません。これだけの内容を、よく本文222ページでコンパクトにまとめられたものという感じさえします。著者のチーズへの優しい思い入れが伝わり、チーズのすべてが勉強できます。一読をお勧めしたくなります。


著者略歴
1952年、東京生まれ、1982年東北大学大学院卒 農学博士 2001年から教授。専門は「畜産物利用学」「応用微生物学」 著書多数

 新書版定価本体 980円